雪の鳥
雪の鳥




 はらはらと白い雪が舞い落ちる。

 私は公園の枯れた木の根元で蹲ってた。

 地面には雪が落ちて、解けて行く。

 私は小さく溜息をつく。



 自分が悪いって解ってる。

 喧嘩して、飛び出して、当てもなく彷徨って。



 出てくれば自由になれると思ってた。

 そして、知った。

 私はあの人の元でこそ生きていられるのだと。



 謝ったら許してくれるかな。

 また笑顔を見せてくれるかな。



 帰りたいのに寒さで凍えて動けない。



 時計を見上げる。

 うっすらと積もった雪で白くなっている公園の時計。



 時間は四時になるところ。





 カチ…。





 微かな音がして、時計の針が動く。











 ああ、そうか。

 思い出した……。

 あの日もこんな雪の日で。

 私は真っ白な雪の中、冷たくなっていったんだ。





 最後に見たのは丁度四時を指すあの時計……。





















「……また、消えた」

 コートを羽織った青年がそっと木に近づいて行く。

 傘を閉じて、

「いつも、丁度四時……か」

 腕時計を見て、溜息をつき、そっと木の根元にしゃがんで手にしていた空の鳥かごを開けた。

「いい加減、帰って来いよ……」

 呟くが、そこには雪が舞い落ちるだけ。







 子供の頃、怪我した小鳥を助けた。

 真っ白で雪のような小鳥だった。

 兄弟のように可愛がっていたのに。

 ある日、餌を変えようとかごを開けた時、何処かに飛び去ってしまった。

 散々探し回って見つけた時は、雪の中で冷たくなっていた。







 それが丁度、この木の根元。

 それから毎年、冬になるとここにはあの小鳥が現れる。

 幾度も迎えに来ているのに、それに気づくこともなく消えていく。





 飛べない鳥は今もまだ、そこにいる。



END



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